02 11月 つくり手を訪ねて-七宝焼き-
七宝焼きは、金属の土台にガラス質の釉薬を焼き付ける日本の伝統工芸です。
まるで宝石のような深みのある鮮やかな色彩が魅力です。
今回は、京都の七宝焼き職人のもとへ。
京都駅より東、自然の豊かな住宅街の中に工房はありました。
こちらでは、井和井オリジナル根付の「てまり七宝」を作っています。
七宝焼きは、銀線を使い絵柄を仕切る有線七宝が有名ですが、
今回ご紹介する「てまり七宝」の技法では、型を用いて銀をプレスした土台を使用します。
まず、土台に色ガラスの釉薬を細部まで丁寧にのせていきます。
直径2㎝の土台に何色もの釉薬をのせていくのは、息をするのがためらわれるほど繊細な作業です。
隣り合った色が混ざらないように、釉薬のおく順番や焼成のタイミングも計算しているとのこと。
さらに、緑の釉薬ひとつとっても数種類あり、色と色の相性が悪いと割れてしまうこともあります。
職人も慣れるまで何回失敗したことか、と笑って話してくれました。
釉薬をのせ終えたら、焼成前に一度乾かします。
ここで水分が残っていると、釉薬がはじけてしまうそうです。
その後、850度前後の電気炉で焼成します。
釉薬をのせ、焼成を何度か繰り返していきます。
最後に、透明の釉薬を重ねていきます。
焼成すると艶のあるなめらかな表面に。
土台からこぼれた釉薬を研磨して完成です。
この地に工房を構えて30年。
職人の祖父の代から使っている道具たち。
職人の手の中で表情を変える姿に、時間を忘れて見入ってしまいました。