つくり手をたずねて

  七宝焼きは、金属の土台にガラス質の釉薬を焼き付ける日本の伝統工芸です。 まるで宝石のような深みのある鮮やかな色彩が魅力です。   今回は、京都の七宝焼き職人のもとへ。 京都駅より東、自然の豊かな住宅街の中に工房はありました。 こちらでは、井和井オリジナル根付の「てまり七宝」を作っています。     七宝焼きは、銀線を使い絵柄を仕切る有線七宝が有名ですが、 今回ご紹介する「てまり七宝」の技法では、型を用いて銀をプレスした土台を使用します。 まず、土台に色ガラスの釉薬を細部まで丁寧にのせていきます。   直径2㎝の土台に何色もの釉薬をのせていくのは、息をするのがためらわれるほど繊細な作業です。 隣り合った色が混ざらないように、釉薬のおく順番や焼成のタイミングも計算しているとのこと。     さらに、緑の釉薬ひとつとっても数種類あり、色と色の相性が悪いと割れてしまうこともあります。 職人も慣れるまで何回失敗したことか、と笑って話してくれました。     釉薬をのせ終えたら、焼成前に一度乾かします。 ここで水分が残っていると、釉薬がはじけてしまうそうです。 その後、850度前後の電気炉で焼成します。 釉薬をのせ、焼成を何度か繰り返していきます。   最後に、透明の釉薬を重ねていきます。 焼成すると艶のあるなめらかな表面に。 土台からこぼれた釉薬を研磨して完成です。     この地に工房を構えて30年。 職人の祖父の代から使っている道具たち。   職人の手の中で表情を変える姿に、時間を忘れて見入ってしまいました。            ...

  盆地のため暑さが厳しいことで知られる京都。 夏の涼をとるために欠かせないものといえば扇子です。 京扇子は平安時代初期からの歴史があり、国の伝統工芸品にも選ばれています。 また、「京扇子は87回職人の手を通る」といわれ、扇子の製造は上絵や扇面、扇骨など工程ごとに 熟練した職人がおり、分業体制が敷かれています。 今回は、仕上げ加工(ツケ)職人の作業をご紹介します。   こちらは折加工された、地紙(じがみ)。 芯紙と呼ばれる和紙を中心に両面に紙を張り合わせたものです。 竹の中骨を差し込む隙間をあけており、息を吹き込むことで穴が広がります。【地吹き】 糊付け 中附け 中骨に糊をつけ、穴に差し込みます。【中附け】 正確に手早く差し込まれる様は長年の経験を積んだ職人のなせる業です。 近頃少なくなりましたが、こちらの職人はほのかな香りをしのばせるために中附け前のこの段階で、 中骨に香りづけをしています。     こなし、矯め(ため) 糊によって膨らんだ地紙を整えるために、畳んだ状態の扇子を木の棒で叩き、その後親骨をあぶり 内側へ曲げます。【ならし・矯め】 曲げ方が悪いと地紙に皺がよってしまうとのこと。 次に両端の親骨の余分な長い部分を切り落とし、最後に親骨に糊をつけて地紙を接着、固定して 完成です。【先づめ・親あて】 先づめ この道65年、数々のヒット商品を手掛けている職人。 誠実さが伝わってくる繊細で丁寧な手仕事でした。(担当者)...